前述のように、発電系には音の時間軸情報を乱す様々な弊害が働き、
時間歪が生じ、原音とはかけ離れた異質な再生音へと変化してしまいます。カンチレバーや、ダンパー等の機械パーツをいくら取り替えてもこの問題は解決しません。
左右の音質が異なるといった大抵のカートリッジにあった欠陥は、この時間歪によることが長い研究の結果判明しています。左右の周波数特性がフラットであっても、例えば右chが時間歪みにより高音域がより速く、又は低音域がより遅れてレスポンスされると、高音に偏った明るくきつい音を発します。逆に左chの低音のボリューム過多の音はその逆となります。時間歪みが無く全体域に亘り同時にレスポンスする音は、左右共にフラットなバランスで聴くことができるのです。発電系に発生するこの時間歪を解消させることは、原音再生のためには、避けて通ることのできない関門となります。
長い研究の結果、次の15項目の電気的条件が判明。そして、この中の一つの項目でも、誤った設定を行うと、左右同等の音になり得ないことも確認。この事は即ち、カートリッジを構成する同じパーツを使って、
2の15乗(32768)種類の異なる音のカートリッジが設計出来ることを意味しています。そして、その中のただ一種の組み合せ、15項目全てに正しい設定のカートリッジのみが、左右全く等しい自然なサウンド・バランスを持ったステレオを再生し得ることとなります。
一例として第3項目:左右チャンネルの発電コイルの配置方法について説明してみましょう。
図2の巻線方法はR1000シリーズに採用している方法で、左右同相の信号方向、つまり水平方向に対して対称となっています。この方法は電気的に対称であるばかりでなく、出力端の+-端子の位置も対称となります。